スポーツクラブを卒業するタイミング
僕はインストラクターとしてスポーツクラブでプログラムを持っています。
そんな中で会員さんから『こんなことをやって欲しい』という声がたまにあります。
『基礎をやって欲しい』
『クラブで踊れるカッコいいステップをやって欲しい』
『このジャンルをやって欲しい』
『この先生に習っているんですけど、この動きを教えてほしい』
様々です。
最後の要望は論外ですね。
スタジオではどんな声があるのかをお話していきましょう。
実は…殆ど無いんです。
『もう少し基礎の時間が欲しい』
『振付の時間の練習時間が欲しい』
といった、もともとやっていることに対しての時間配分の要望はあっても、やっていること自体の要望はないんです。
今はスポーツクラブでは要望は聞かないようにしています。
というか、聞けないのです。
その理由を話す前に、スポーツクラブとスタジオの比較をしていきましょう。
ダンススタジオとスポーツクラブの違い
皆さんはスポーツクラブとダンススタジオの違いはどんなところに在ると思いますか?
スポーツクラブ | ダンススタジオ |
減量、運動不足解消、シェイプアップなどを目的とした受講者向けにプログラムを組む | 純粋にそのダンスの上達に向けた指導。 |
不特定のメンバーを対象。初体験者も含めた全て のレベルが参加できる内容であることが必要。 | 決まったメンバーが継続して定期的に受講。レベル別のクラス分けが可能。 |
出入りが激しく、長期に渡るカリキュラムは不向き | 課外活動やそれに向けた集中レッスンも可能。 |
恐らくイメージ通りではないでしょうか?
ダンススタジオの方をもう少し説明すると
ダンススタジオは上手くなる為の技術を指導、創造性を育む場所。
キッズは学校とはまた別の社会、挨拶を学んだり、空間を共有すること、振付をするなら人との距離も大事です。
イベントに出るなら責任感、空間把握、自分だけでは成立しない表現を学べます。
チームを持てば、衣装や音楽、振付等クリエイティブな感性を学べます。
大人もしっかり活動すれば、キッズと同じものを学べます。
大人は自分で時間の調整も出来ますから、その気になればキッズよりもどんどん伸びる事も可能です。
それでは、スポーツクラブはどうか?
音楽に合わせてとにかく動いて汗をかいて楽しむ場所。」そんな場所に『技術』や『基礎』はかえって邪魔になるのです。
スポーツクラブの方で『とにかく楽しめればいいです!』と楽しそうにお話されます。
プログラムの時間内は動き続けて汗をかいてスッキリする。
これがスポーツクラブの醍醐味ではないでしょうか。
そこに技術や基礎は不要。上手く踊る必要もありませんし、出来る必要も無いのです。
細かいことは気にしない。それがスポーツクラブです。
あるサイトにこんな質問がありました。
フィットネスクラブのダンスは、趣味程度の自己満足レベルだ、と言ったらイントラは気を悪くされますか?
他の人が言ってた受け売りだが、自分もそう思った
それなりの先生もいたし、フィットネスクラブでも頑張っていれば上を目指せる、と言うイントラもいたので、それを真に受けてやってきたが、 他の世界を知ってぜんぜん浅いところでやってた自己満足に過ぎない子どものお遊戯だったんだ、とまで思えた
自分自身がずっとフィットネスクラブでやってきてそこでは踊れてはいてもスタジオに行ってそのレベルの差をすごく感じた
どんな優秀なイントラがいたとしても、フィットネスクラブでは、そこに来てる会員に当たらず触らず、振りを伝えて時間内に楽しく踊ってもらって、というスタイルである以上、上手くなりたくても限界がある
と感じたようです。
その質問の回答は
受講する側が自分の目的に応じてレッスンを選ぶべきであり、個人レッスンでも無い限りインストラクターが個人の希望に合わせることを期待するのはまちがい
と締められていました。
それを踏まえて
最初に挙げたスポーツクラブの要望が何故聞けないのか?
先程の質問から分かる通り、ダンススタジオとフィットネスクラブの性質の違いであり、インストラクターはそれに応じた教え方をします。
『基礎をやって欲しい』
基礎をやって欲しいと思う人はスポーツクラブ中にどれだけいるでしょうか?
上手く踊れなくてもいいから楽しみたい。
基礎はスポーツクラブを楽しんでいらっしゃる方には邪魔になることがあります。
ステップは足を憶えれば何とか出来ます。
基礎は『出来ているか出来ていないか分からない』という、非常に達成感を感じにくい、感じるようになるのに時間のかかる代物で、出来るようになるのに時間もかかります。
それに、『基礎をやって欲しい』という方はもうそろそろスポーツクラブを卒業されたほうがいい方々だと思います。
流石に面と向かって、スポーツクラブを卒業しましょう!なんて言えませんから、『ここでは基礎はやれません。超初心者向けで誰でもすぐに出来る内容にしていますから』とお答えしています。
『クラブで踊れるカッコいいステップをやって欲しい』
今のステップで満足出来ない、いう事でしょうから、もう卒業でしょう(笑)
実際、クラブで踊っている時に『このステップをやる!』とわざわざ考えてステップしません。
しっかりリズムを感じて、体を揺らし、ステップするんですね。かっこよく踊ろうと思ったら、基礎が大事。
もう、スポーツクラブでは満足できないのは解っていると思いますね。
『このジャンルをやって欲しい』
これはどの先生にも言う訳じゃないでしょうけど、ある程度どのジャンルも出来る能力の高い先生だから言われると思います。
そういう先生はスポーツクラブには向きません(笑)
自己研鑽の高い先生だからどんなジャンルでも踊れるでしょうし、求められてしまうんだと思います。
分かっている事でしょうが、他ジャンルをやりたい、というのは他ジャンルが出来る基礎が必要なんですね。
それは『基礎をやって欲しい』と同類なんですが、あまりダンスを分かっていないと簡単に要望してしまうんでしょうね。
『この先生に習っているんですけど、この動きを教えてほしい』
これは論外(笑)
一度だけ言われたことがありますが、その先生なりの理論があると思いますから、僕が別の理論でお話するとごちゃごちゃするでしょうし、相手の先生に失礼になりますから…とお話しました。
それでもいい、と食い下がられましたが、お断りしました。
これ、注意が必要ですけど、レッスン前に他のプログラムの振付を踊られている方、先生は結構見ています(笑)
多分、あなたはそこまでよく見てもらえないと思います。
逆に、その先生がやっていることを練習している人はアドバイスをくれると思います。
インストラクターだって、『レッスンでやっていることをしっかりやっているな』と思う人にはアドバイスしたいものです。
毎回出ているから…という方。他のプログラムも出ているんですから、毎回出ている事はそんなに通用しませんよ(笑)
要望が出るという事は、もうスポーツクラブではなかなか満足できない、またはそのプログラムに満足できないという事ですから、次のステップに進むことをお勧めします。
基礎、技術、ジャンルが出だしたら、もうスポーツクラブではカバー出来ません。
振付をゆっくりやって欲しい、もっと早く進めてほしい、といった内容に関しての要望はまだその場所で楽しめると思います。
『あれ?思い当たる節がある』という方は外に目を向けてみては?
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